「1.まったく、仕方ありませんね。やりますとも。でも今度から、一度に全部言ってくださいね。」
もう話は終わりだとばかりに返事をしないトリティに、やり場のない怒りを感じながら紅音を振り返った。
「今度はでっかいカボチャだってっ」
「 あらら(´・_・`) 仕事で集めなきゃいけないものって請け負ってないと落ちないから面倒なのよね……普段から落ちてればお互い手間が省けていいのにさ」
ここで聞えるように文句を言っても愚痴をこぼし合っても何の得にもならないので、ぶつくさ言いながらもあたしたちの足はルックセムへ向かう。
紅音に引きつけてもらって闇討ちするいつもの方法でカボチャの種を集めたあたしは、ザントに取って返してトリティに種を突き出した。
「ああ、やっと材料が揃いましたね。それでは、深眠りのネクターをつくってみるとしますか?」
何故そこで疑問形なんだっo(`ェ´*)oプンスカプン
その為にこんな二度手間させられてるんじゃないか。
「3.深眠りのネクターって?」
これっぽっちも興味なんてなかったけど、あたしの手間を増やしてくれたお礼をせずにはいられなかったので、ムダに説明を求めてみる。
「深眠りのネクターは、自然の材料を使って作った睡眠剤です。その効力はとても強く、誰もが1分もしない内に寝てしまいます。不眠症に悩んでいるお偉いさんたちが度々使う薬でもあります。」
お偉いさんが度々使うような薬ならストックぐらい用意しとけっ
「2.作り方をもっと詳しく説明してください。」
「簡単です。フラーネの種とパンプキンの種を細かく混ぜた水を沸騰させると、次第に色が茶色になります。その時、冷たい氷水に入れ素早く冷やすと、深眠りのネクターが完成されます。」
えっ( ̄□ ̄; それだけですか?
簡単とはいえ、ポーションを名乗るようなものだから、なにやら怪しげな粉とか不気味な液体とかを混ぜるのかと思ったら、そんなおばちゃんの知恵袋みたいな代物かい( ̄△ ̄#)
これ以上追求すると幾多のモンスを屠ってきたレイピアにものを言わせたくなりそうなので、今日はこの辺で勘弁してやる事にする。
「1.そうなんですか。じゃあ、早く作ってください。」
「ようやく出来上がりましたね。これをウォーレンにもっていけば、ウォーレンもあなたを認めないわけにはいかないでしょう。ウォーレンの妻が不眠症に悩んでいるそうですからね。」
( ゚Д゚)ハァ? 大事なのは見込みがあるかどうかとかなんとか大層な事を言っておいて、そんな奥さんに頼まれたお使いみたいな真似をあたしにさせたのか、あのぢぢいヽ(`Д´)ノ
できるものなら、さっき拾った蒸留水を混ぜて薄めたいところなのに、自分の体ながら自由に動かせないのが恨めしい。
ところで「トリティーは私が集めてきた材料で、熟睡のネクターという睡眠剤を作ってくれた。これくらいだったら、ウォーレンも私がミューズとして劣らないことを認めてくれるはずだろう」なんて勝手なモノローグがどこからともなく流れてきたんだけど、これはどこの女神のマインドコントロール? 熟睡のなんて間違えてみたり、はずだろうなんて文法がおかしいから赤ちゃんでも洗脳できそうにないけど。
「ああっ!これは深眠りのネクター?予想よりも素晴らしいものを作ってきましたね。」
なんであんたらはそうムダに疑問符をつけたがるんだ。自分で何を作って来いって言ったのかも忘れるほどボケてるのか? まさか、あたしの転職話まで忘れてないよね?
「1.どうです。私の言った通りでしょう。」
何が言った通りなんだろう? 憎まれ口も捨て台詞もウォーレンが聞いている時に言った覚えはないけど……
「それじゃあ、ご希望通りミューズに転職してあげましょう。但し、魔法は正しいことに使ってくださいよ。分かってますね。」
まて。あんたが転職してどうするっ!
但し、魔法は正しいことにってダジャレのつもりか?
言われなくても正しいことに使いますとも。あたしにとって正しいことが他の人には迷惑かもしれないけど、それは問題ないよね? 正しいことに使ってるんだから。
「では、楽しい冒険と頼もしい友人が、これからの旅先であなたを待っているようにお祈りします。」
